このビデオスイッチャー、デュアル出力・SD録画・ヘッドホン対応でなぜか4万円前半【STREAM1 / Cinetreak 実機レビュー】

4.0
作業効率化

配信現場の“定番”といえばATEM Mini Proだが、同価格帯に妙に仕上がった刺客が出てきた。Cinetreakの「STREAM1」。結論から言えば、一般的な配信用途ではATEM Mini Proの弱点をピンポイントで潰してくる。デュアルHDMI出力、デュアルUSB、SDカード録画、そしてヘッドホン端子。4万円前半でこの構成は、正直ずるい。

Writer:アケサカ (ガジェットブロガー)
ついつい日々新しいガジェットを買ってしまうので、少しでも誰かの役に立てばと思ってレビューをしています。趣味は音楽とキャンプ。仕事はメディア関係。

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まずは外観と入出力。ATEM Mini Proより一回り大きいが“必要な穴”が全部ある

本体はATEM Mini Proと似たレイアウトで、プログラム/プレビュー、トランジション、ピクチャー・イン・ピクチャーなどの操作系はビデオスイッチャーを使っている人ならすぐ馴染む。初めての人でも物理ボタンが多くて使いやすいことにくわえ、Tバーやジョグダイヤル、ジョイスティックが備わっていて、指先で細かく追い込みやすい。


背面はHDMI入力×4、マイク×2に加えて、HDMI出力×2USB×2、そしてヘッドホン端子。ここが最大の差分だ。ATEM Mini ProはHDMI出力が1系統で、マルチビューとプログラムを両立させづらいのが弱点だった。STREAM1はPGM出力とマルチビュー含めたAUX出力を同時に物理モニターへ、さらにUSB経由でPCにも映像を渡せる。返しモニター(出演者向けのモニター)運用まで、一台で段取りできる。

録画はSDカードに直収録。USB録画との二択も可能

ATEM Mini Proで“理屈上できるけど実戦ではやりにくかった”のが本体録画。STREAM1はSDカードスロットを備え、配信しながらローカル収録が現実的に使える。USBポートが2つあるので、片方をPC、片方をSSDといった構成も組みやすい。ビットレートやフレームレート、ファイル分割(オートセーブ)などの録画設定も本体メニューから調整できる。それがATEMと違いアプリなし、本体だけで設定変更できるのが強い。

本体だけで完結する設定メニューが秀逸

右下の「MENU」ボタンを押すと、マルチビュー右下に設定メニューが現れ、ジョグでトランジション種類/方向/デュレーション/ソフトネスオーディオのボリュームやディレイロゴ重ね/位置/サイズメディア(動画)再生の割り当てまで一通り触れる。PCソフトに頼らず現場で完結できるのは、小規模チームやワンオペでは非常に効果的だ。

ピクチャー・イン・ピクチャーとワイプは“手で決められる”

PiPはソース選択、サイズ、クロップ位置を本体で直感的に決められる。ジョイスティックで位置決めできるので、手元ワイプや顔ワイプの細かい追い込みが速い。枠線の色も変えられる。Tバーは演出に効くし、0.5秒や1秒といった定速のトランジションと使い分けも簡単だ。

キー合成・DSK・PTZ・縦配信まで網羅

クロマキー/ルミナンスキー、ダウンストリームキーでのテロップ合成、PTZカメラのパン・チルト・ズーム操作(LAN経由)、出力の縦横切替(Horizontal/Vertical)までカバー。縦配信の需要にハード側で応えるのは、この価格帯では珍しい。入出力のFlip(上下・左右反転)も用意され、天吊りカメラの逆像補正など現場の小ネタにも対応する。

4K入力→内部でFHD出力変換。入力1・2は4K受け可

最大出力はフルHDだが、入力1と2は4K信号を受けて内部でFHDにダウンコンバートしてくれる。カメラ側をいちいちFHD出力に変更しなくても差すだけで通る。入力3・4はFHDまで。運用の小さなストレスを確実に減らしてくる仕様だ。

オーディオは実戦的。ただし“モノラル4分割”はできない

マイク2系統はステレオ扱いで、ATEM Mini Proのようにモノラル4分割で独立制御は不可。ワイヤレス2セットを左右に振り分けて4チャンネル的に運用、のような芸当は苦手だ。ATEMではそれができるのでここは素直にATEMが強い部分。レベル調整やディレイは本体で追い込めるので、一般的な二人トークやナレーション+BGMなら十分。厳密なチャンネル運用は、ミキサー側で前処理して入れるのが現実解。
なお、ATEMではソフトウェアで設定をするのが通常だが、そのかわりにインプットごとのカラコレや、入力音声ごとのパラメトリックイコライザー設定など、ソフトウェアを使ったときの自由度は高い。ソフトウェアを使いこなした場合においてはATEMのほうが得意な領域もしばしばある。

ネットワーク・配信・マクロ

LAN接続でWeb UIにアクセスし、スマホやPCから切替操作も可能(安定度は環境次第)。本体からのRTMP配信設定も持ち、YouTube等へ直接飛ばせる。マクロ機能も用意され、定型操作を登録できる。

ATEM Mini Proとの比較で見える“向き・不向き”

STREAM1が強いところ

  • HDMI出力×2でPGMとマルチビューの同時運用が容易。返しモニター運用がシンプルになる
  • USB×2+SDスロットで、配信と同時録画の現実運用ができる
  • ヘッドホン端子で本体から直接モニタリング可能
  • 本体OSDが実用的。現場で完結しやすい
  • 縦配信出力4K入力(1/2系統)など運用の痒い所を埋める

ATEM Mini Proが勝るところ

  • Blackmagicカメラ連携やカラーコレクションの深さ
  • プロ現場での採用実績・ワークフロー資産の厚み
  • マイクをモノラル4分割で扱える柔軟なオーディオ運用

要するに、“配信の実装”を少人数でサクッと回すならSTREAM1が速い。Blackmagic統一の制作体制や既存資産、ATEM Controlアプリへの慣れがあるならATEM Mini Proに分がある。

気になった点・注意点

  • 本体サイズはATEM Mini Proより大きく、設置面積はやや増える
  • 取扱説明は英語/中国語のみ。国内サポート体制は要確認
  • オーディオのモノラル個別運用が必要な現場は、外部ミキサー併用が前提で、なら素直にATEM使うかってなる。なお、音声のON/OFFとボリュームについても、ATEMは全チャンネル個別に存在するので音声操作はATEMのがしやすい
  • 管理画面にはLAN接続が必要で、インストールすればUSB接続だけでいけるATEMとは一長一短

この価格なら“配信用の主役”を狙える出来

STREAM1は、ATEM Mini Proユーザーが現場で感じていた具体的な不便を、地味に、しかし徹底的に潰してきた。デュアル出力/同時録画/ヘッドホン直挿しの三点だけでも採用理由になる。配信をこれから組む人、ATEMでマルチビューや返しに悩んでいた人、ワンオペでの段取りを簡単にしたい人。こうした現場に素直に刺さる。

既存のBlackmagic運用が固まっていないなら、STREAM1を“第一候補”に。ATEM Mini Proの美点は尊いが、4万円前半の価格帯でここまで“実務のストレス”を除去した一台は希少だ。

※レビュー協力:Cinetreak様(提供)

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